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中学受験小説版受験の神様 家庭教師ジョーカーの「中学受験物語」 

実際の家庭教師が書いた笑って泣けて心温まる中学受験の物語!受験でぎくしゃくしがちな親子の絆を深めながら、中学受験の実態や効果的な勉強法もご理解頂けます。親子でどうぞ!リンクフリー

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中学受験物語 1-3 授業がわかるのに点が取れない 3

物語 ] 2007/07/11(水)

「小説 受験の神様 家庭教師が書いた謎の家庭教師と中学受験母と子の物語」




その晩、食事が終わると、かおるはつとめてやさしい口調でこのテストを引き合いにだした。
「靖世、この前のテスト返ってきたわよ」
「えっ。なか見たの」
「見たわよ。ひっどい。なにこれ」
「テストの答案」お茶を濁(にご)してごまかすように、靖世は頭をかいた。
「またそんなこといって、あげ足を取る。点数よ。てーんすう」
靖世はなかを開けて成績表を広げてみた。目が宙にういている。

「塾でな・に・聞いてんのか……」靖世はこたえなかった。

 かおるは身を乗り出した。
「ねえ、塾の先生の話、わかるの」
「わ、わかるよ」
「ほんと?」
「うん」
「じゃあなんでテストでできないの」
「わかんない」
「わかんないって、まじめに考えてよ」
「わかんないんだもん」靖世はぶっきらぼうにこたえた。

 かおるは質問を変えた。
「算数さ、はじめの方は結構できてるけどさ、二番の文章題からぜんぜんできてないじゃん。塾でこんなのやったんじゃないの」
「似た問題はやったけど、同じのじゃないよ」靖世はつまんなさそうにこたえた。
「そりゃ、まるで同じ問題はでないわよ」
「だって…しょうがないじゃん。あっそうだ。野球、野球。巨人、今日勝ってるのかな」

 ひととおり出された食事を食べ終わらせた靖世は、敷居(しきい)をへだててリビングとつながっている畳の間に行こうとした。そこにあるテレビのスイッチを入れることで、かおるの小言から耳をふさごうとしたのである。テストのことなどどこふく風という感じだ。

「ちょっとぉ」
 そうはさせじとかおるは靖世の腕をつかみ、テーブルにすわらせた。
「しょうがないって…あんたすこしはなんとかしようと思っているの」
「わかんないよ。なんでできないんだって言われたって」
テレビを見せてもらえないせいか、靖世もすこしふてくされぎみだ。

「宿題ちゃんとやっているの」
「やっているよ。ちゃんと」
 そういえばちゃんとかどうかはともかく宿題は一応やるようにしているな、とかおるも思い返した。塾のない日はだいたい、食事が終わると自分の部屋に行って、算数の計算みたいなものをノートにごちゃごちゃ書いている。

 授業は聞いているし、わかるし、復習もしている。じゃあなんでできないんだ。

 
「わかった気になっているだけじゃない?」
「わかった気?わかった気ってなあに?」
「ママも経験があるんだけど、先生が授業でお話していることは明快でそのときは『わかったなあ』って気がするんだけど、あとになってみるとぜんぜんわかってないってこと」
「そうかなあ。でも、先生の話を聞いてるときは本当にわかったと思うんだよ。こんなんじゃ、わかったってことがいったいどんなことなのか、それこそよくわからないよ。ああ、わかんない。わかんない」

 手を払うようにそういいながら、テレビの前に腰を下ろしスイッチをまた入れた。プロ野球番組のアナウンサーが、チャンスだなんだいってさけんでいる。靖世はぼおっと口をあけてただ画面を見ている。

「ねえ、やる気あるの?」

 返事がない。試合の動向が気になって、かおるのことなど見向きもしない。
かおるは靖世の態度にだんだん業(ごう)を煮やしてきていた。

「聞いてんの?」
「……んっ……。………う、うん」

 今度は気のないカラ返事がかえってくる。こうなるとかおるのほうもはじめこそ気を利かせて優しく言おうとしたが、気の短い性格とテレビの耳障りな音が重なって、感情を押さえきれない。

 かおるは、つばをはくように言葉を吐き捨てた。

「なによ。だめガキっ」

 かおるにとって思いがけず出てきた言葉だったが、靖世にとっても不意打ちだった。靖世の顔はみるみる赤くなった。

「だめガキっていったな……」

 かおるはいったん感情的になってしまうと、もうあとに引けない。一度鶏冠に来てしまうといつものおだやかな標準語が一転して、兵庫県淡路島育ちの迫力ある関西弁が高射砲のように火を吹いてしまうのだ。

「ああ、言ったわ。だめガキに『だめガキ』って言ってなにがあかんのや。それともほかに「トンマ」とか「スカ」とか、なんかほめ言葉、付けたろか?」

 靖世も言い返した。
「だってしょうがねーだろー。わかったかわかってねーのかなんて、わかんねーよー!」

「アホ!そんなのちゃんと勉強すりゃー、わかるわ!あんたがちゃんと勉強しないんだけらいけないんやろが!」

「うるせー。ママになにがわかるんだ。おれだってがんばっているんだぞ!」

 それからはいつものように言い合いになった。かおるも靖世も頭の中のやかんが沸騰(ふっとう)してひっくり返っていた。罵声と怒号の雨が降り、靖世はすっかりつむじを曲げた。かおるも言うべきことばがなくなると、ぷいっと押し黙って口をきかなくなった。

 そのむこうでテレビは大盛(おおも)りあがりを見せた。非情に気まずい御手洗家(みたらいけ)の雰囲気のなか

「はいったあ。逆転ホームラン!やったああー」

というアナウンサーの間の抜けた絶叫と、ファンファーレの音楽が部屋じゅうにひびきわたる。かおるはその音が耳についたのか、ぷちっとテレビを切った。部屋の中に静寂が戻った。

 「ねえ、靖世」少ししてかおるは声をかけた。
「しらないよっ!」靖世はまだいじけてへそを曲げている。

 かおるは畳にすわっている靖世の横に腰をおろした。
「この二番の二なんてできそうだけどな」
 かおるがひとりごとをいっていると、靖世がかおるが手にしている問題用紙をのぞき込み,ぼそぼそと小さな声で話しはじめた。ケンカになったとき、靖世というのはこちらから話しかけてもむくれて何も答えないくせに、放っておかれると自分からブツブツ話し出すのだ。いつものパターンである。

「その問題ね。前に授業でやったしこれは絶対できると思ったんだ。だけどさ、実際解きはじめるとなんか変な感じがしてきてうまくいかなかったんだ。ときどきそんなことがあって、そうなるとあたまのなかが真っ白になって、なにをすればよいかわからなくなるんだ」

「いざ解きだすと進まないって感じ?」
「うん……そうかな。たぶん」

 靖世の気持ちがやや落ち着いてきて、ここですこしでも気のきいた言葉がでれば話ははずむのだろうが、それができない口下手(くちべた)なかおるであった。

ばかじゃないのっ。問題を解く回数が少ないのに決まってるじゃない。もっと勉強しろといっているのに、いうこときかないからダメなのよ」

 どうしても攻撃的な言い方になってしまう。せっかく靖世との会話がもどりかけたのに、これではもとのもくあみである。彼の防衛(ぼうえい)反応(はんのう)が働いてしまってうまくいかない。

「これ以上やれっていうのかよ。むちゃだよ」
 靖世はいじけたくなる気持ちに負けないように、またふくれっつらをつくった。そこにかおるの容赦(ようしゃ)ないことばが、また飛んだ。

「あら、ゲームなんかやってないで、勉強すればいいのよ。そうしたらもっとできるじゃない。努力が足りないのよ」

「ええー、これ以上ゲームを減らせってぇ。ヤダヨー。ただでさえ、我慢しているだぞ。フザケンナ、フザケンナ、フザケンナ」

 靖世は最近わずかになった遊び時間を死守するため、小鼻をふくらませて断固拒否した。やけをおこし、くやし涙をながしながらテーブルやイスにあたりちらしている。こうなれば後の祭りである。かおるの声など、もう耳に入らない。


――――ああ、またやってしまった。――――

 いつも靖世とはこんなことの連続である。頭に血がのぼったとはいえ、かおるには毎度のこと、予想された結果であった。わかっちゃいても、一度スイッチがはいると、その機関銃のような口は止まらない。

 たしかにこれ以上靖世を机に向かわせるのは、かおるからしても気がとがめられた。そりゃあ、もっと勉強している子もいるのだろうが、靖世もそこそこやっている。さらに勉強時間をとろうにもせいぜい日に一時間増やせるかどうかだ。でもここまで追い込んだら、入試本番の二月まで靖世がもつはずがない。

 勉強時間を増やすよりもっとやるべきことはないのだろうか。勉強時間の問題というより、勉強法に問題があるのではないだろうか。

 それにしても、腑(ふ)に落ちないのは、授業がわかって宿題をこなしてそれで偏差値三十八ということである。こんなことってあるのだろうか。宿題が膨大すぎてやりきれない生徒が大勢いるという話も、よく耳にするのに。


 沈黙しているかおるのよこに靖世がいた。ひっくひっくと鼻水をしゃくりあげてはいるが、その目はなかなか評価してくれない母親に訴えるかのようであった。





授業はわかるのになぜかテストになるとできない。算数・数学が苦手な人間の典型的なパターンである。このような状態におちいる生徒は、毎年数知れない。

 わかったはずなのに、書けない、できない。できそうでできない。これは、本人にはかなりフラストレーションがたまるものだ。

 原因がわからぬ病気のように、始末におえない。すらすらできるライバルを横目に見ていると、自分には算数や数学の才能がない、頭が悪いと思い悩んでしまう。

 果たして、ほんとうに才能がないのだろうか。頭が悪いのだろうか。

 なぜこうなってしまうのだろう。そして、どうしたらここから抜け出せるのだろう。努力だけの問題なのだろうか。



<続く。>



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コメント

by 幸運の神様 : URL
はやく続きを読みたいです。
2008/10/18(土) 13:03:41 #-[ 編集]
承認待ちコメント by :
このコメントは管理者の承認待ちです
2011/05/06(金) 22:17:35 #[ 編集]

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プロフィール

受験のキリフダ

Author:受験のキリフダ
できない中学受験生を逆転支援する塾&家庭教師をやってま~す。
 
 希望を失っている中学受験生とその親の笑顔のために、日夜奮闘しています。試行錯誤・研究と反省の結果、偏差値10上げるくらいなら、コンスタントに出るようになってます。フフフ、受験はアイデアよ!
  
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 現在中学受験逆転支援塾「アップスタート」を主宰し、指導及び教材開発などをしております(http://www.kirifuda.jp)。


 私は、小学生以下の年齢の教育の重要性を強く認識しております。
 そして心身ともに優良でかつIQ200以上の天才児というのは、育てられると確信しております。

 私は現在の日本の教育改革の方向性を明らかにするためにも、
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